GIGAスクール構想は、教育におけるICT活用を促進するプログラムで、2023年に小学生から中学生までの子どもたちに一人一台端末を与えて、デジタル教科書や教材など良質なデジタルコンテンツの活用を推進したり、ICTを効果的に活用した学習を取り入れることを目標としていました。
しかし、コロナウイルス感染拡大の影響から子どもたちが学校に登校できず、学習の機会を失ってしまったことから、このGIGAスクール構想の実現が加速しています。
最近保護者向けに実施されたGIGAスクール構想の認知度には、6割の方が知っていると応えたと言いますが、いつから実現されるのか?という点が不明確になっています。
そこで、今回はGIGAスクール構想の開始日から内容をわかりやすく解説します。
特にセキュリティに関しては心配です。
GIGAスクール構想いつから?
- 2022年度までにすべての小中学校で3クラスに1クラス分の学習者用端末を整備
GIGAスクール構想のGIGAとは、Global and Innovation Gateway for Allの略で、「1人1台端末」と、「高速大容量の通信ネットワーク」を一体的に整備することで、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化された教育ICTを実現するものです。
現在、日本の学校の授業におけるデジタル機器の使用時間はOECD加盟国(先進国をはじめとする35カ国)で最下位と、学校におけるICTの利活用は世界から遅れをとっています。
また、学校のICT環境整備は地域格差が大きいという現状もあります。
これらの課題を解消し、これからの時代に求められる資質・能力を育成するために、学校ICT基盤整備を中核とした「GIGAスクール構想」が2018年度に策定されました。
当初は、2018年~2022年の5カ年にわたって実現する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、災害や感染症の発生等による緊急時の児童生徒の学びの保障が問題となり、ICTの活用による解決が求められ、「GIGAスクール構想」の早期実現が必要とされました。
そのため、令和2年度に2,292億円の補正予算が計上され、「一人一台端末」の前倒しの措置がされました。
これまでの小5、6、中1に加え、2023年(令和5年)度に達成する予定だった小1~4、中2、中3の「1人1台端末」が前倒しされ、家庭学習のためのLTE通信環境(モバイルルータ)の整備を支援するなど「GIGAスクール構想」の実現が加速されています。
GIGAスクール構想でできることをわかりやすく解説!
1人1台コンピュータの実現のために、ハード・ソフト・指導体制の3つを充実させます。
- 児童生徒1人1台コンピュータを実現
- 高速大容量の通信ネットワーク
- 家庭学習のためのLTE通信環境の整備支援
- デジタル教科書・教材など良質なデジタルコンテンツの活用を推進
- 各教科等ごとに、ICTを効果的に活用した学習活用の例を提示
- AIドリルなど先端技術を活用した実証を充実
- (独)教職員支援機構による、各地域の指導者養成研修の実施
- ICT活用教育アドバイザーによる、各都道府県での説明会・ワークショップの開催
- ICT支援員など、企業等の多様な外部人材の活用促進(令和4年度までにICT支援員は4校に1人程度配置)
ハード面の整備だけでなく、ソフト・指導体制を一体とした改革を推進することでICTをより学習に活用させます。
これらの環境を整えていくことでこのようなことが可能になります。
- 調べ学習:課題や目的に応じて、インターネット等を用い、記事や動画等の様々な情報を主体的に収集・整理・分析
- 表現・制作:推敲しながらの長文作成や、写真・音声・動画等を用いた多様な資料・作品の制作
- 遠隔教育:大学・海外・専門家との連携、過疎地・離島の子供たちが多様な考えに触れる機会、入院中の子供と教室をつないだ学び
- 情報モラル教育:実際に真贋様々な情報を活用する各場面(収集・発信など)における学習
1人1台PCが配布される?
「GIGAスクール構想」の実現に向けた児童生徒1人1台端末の整備事業において、端末1台あたり4.5万円の補助金が交付されます。
これにより、これまでの教育実践の蓄積とICTが掛け合わさり、学習活動の一層充実を目指します。
1人1台端末は、学習環境にこのような変化をもたらします。
- 教師は授業中でも一人一人の反応を把握できる
→子供たち一人一人の反応を踏まえたきめ細やかな指導等、双方向型の授業展開が可能に - 各人が同時に別々の内容を学習できる
- 各人の学習履歴が自動的に記録される
→一人一人の教育的ニーズ・理解度に応じて個別学習や個に応じた指導が可能に - 一人一人が記事や動画等を集め、独自の視点で情報を編集できる
- 各自の考えを即時に共有し、共同編集ができる
→全ての子供が情報の編集を経験しつつ、多様な意見にも即時に触れられる
小学生はどこまでできるようになる?
小学校ではプログラミング教育が必修科目となりましたが、GIGAスクール構想によりプログラミングの内容も充実したものになります。
また、GIGAスクール構想により、ICTが学習に活用されると、教科の学びを深めることができます。
書く過程を記録し、よりよい文章作成に役立てる
- 文書作成ソフトで文書を書き、コメント機能等を用いて助言し合う
- 文書作成ソフトの校閲機能を用いて推敲し、データを共有する
ICTを活用して国内外のデータを加工したり、地図情報に可視化したりして、深く分析する
- 各自で収集したデータや地図を重ね合わせ、情報を読み取る
- 分析した情報を、プレゼンソフトでわかりやすく加工して発表
観察、実験を行い、動画を使ってより深い分析を
- 観察・実験を動画で記録することで、現象を丁寧に分析
- その結果を、レポートやプレゼン資料などにまとめる
- 写真やグラフの挿入により、表現の幅を広げる
関数や図形などの変化の様子を可視化して、学びを深める
- 画面上に表示した二次関数のグラフを、式の値を変化させて動かしながら、二次関数の特徴を考察
- 正多角形の基本的な性質をもとに、プログラミングを通して正多角形の作図を行う
海外とつながる「本物のコミュニケーション」により、児童生徒の発信力を高める
- 一人一人が海外の児童生徒とつながり、英語で交流・議論を行う
- ライティングの自動添削機能やスピーキングの音声認識機能を使い、児童生徒のアウトプットの質と量を大幅に高めることが可能
中学生はどこまでできるようになる?
中学生では、上記の各教科ごとの活用に加え、全国学力・学習状況調査の中学校英語調査において、「話すこと」調査のCBT(コンピュータを使った試験方式)での実施が検討されています。
高校生はどこまでできるようになる?
高校生ではGIGAスクール構想によるICTの活用により、STEAM教育の実現も可能になります。
STEAM教育とは、Science,Technology,Engineering,Art,Mathematics等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育のことで、探求のプロセスにおいてICTが効果的に活用されることが期待できます。
この取り組みの例として、農業高校において、生徒が見つけた農業の課題を解決すべく、IoT活用によるデータ解析、ロボットやプログラミングの演習を実践しています。
また、東京と北海道の学校をつないだ共同研究も実施されました。
GIGAスクール構想の課題は?
これからの時代を生きる子供たちに必要なGIGAスクール構想ですが、進めるにあたって課題は大きく分けて3つあります。
GIGAスクール構想の課題1つ目
1つ目に、教員や保護者のITリテラシーやスキルの不足があげられます。
特に教員は、通常の業務がかなり忙しいにも関わらず、さらにICTを活用した授業の研修をし、授業の準備をする時間をつくることはとても大変です。
また、教師間で格差も出てくることも問題です。
教員にITの知識が不足しているために、せっかく利用できるようになった端末に制限をかけすぎて本来利用すべき機能も使えない状況にあるという声もあがっています。
GIGAスクール構想の課題2つ目
2つ目に、通信ネットワークを構築するためのコストも課題としてあげられます。
補助金は出ますが、消耗品やソフトウェアなどの補助金の対象外となるコストがかかってしまいます。
GIGAスクール構想の課題3つ目
3つ目に、「セキュリティ」の問題です。
教員や児童生徒の個人情報を保護することはもちろんですが、インターネット上にあふれる有害な情報から児童生徒たちを守ることも重要です。
セキュリティについての正しい知識を習得し、ICTを最大限に活用するには実際の教育現場では課題がまだまだありそうです。
まとめ
- GIGAスクール構想は教育におけるICT活用を促進するプログラム
- 災害や感染症による緊急時にも活用できることから実現の加速が求められている
- 1人1台端末や高速大容量の通信ネットワークの実現を目指している
- ハード・ソフト・指導体制を一体とした整備する
- GIGAスクール構想の実現には教育現場での課題が予想される