香港の「民主化の女神」と言われるアグネス・チョウさん。
国際社会に香港の民主化をアピールするアグネス・チョウさんが逮捕されたことが報道されました。
アグネス・チョウはなぜ逮捕されたのでしょうか。
有罪の判決を受けると無期懲役という可能性もあるということですが、アグネス・チョウさんは大丈夫なのでしょうか。
有罪の危険性もあるのに、アグネス・チョウさんはなぜ運動を続けるのか調査しました。
アグネスチョウ逮捕理由は?
2020年8月10日に、政治活動家のアグネス・チョウ(周庭)さんが逮捕されました。
逮捕の理由は、国家安全維持法違反容疑です。
これは、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えたという容疑によるものです。
今回、アグネス・チョウさんだけでなく、民主派の香港紙「蘋果日報」などを発行するメディアグループの創業者・黎智英さんら「蘋果日報」の幹部ら七人も同じく国家安全維持法違反容疑で逮捕されています。
アグネス・チョウさんは香港の民主化を目指して運動を続けておられ、今回は、アグネス・チョウさんが分離主義を扇動したとして逮捕されたものと思われます。
アグネス・チョウさんは、日本でも「民主化の女神」などと呼ばれ、香港民主化の象徴となっています。
1996年12月3日生まれで現在23歳。
なかなかの美人ということもあり、香港でも「学民の女神」などと呼ばれています。
これまでにも、デモの参加者を煽り、警察本部を包囲したという罪で起訴されたりもしています。
今回拘束されたアグネス・チョウさんですが、8月11日の深夜には無事釈放されています。
釈放後にインタビューを受けたアグネス・チョウさんは、記者に対して、中国語、英語、日本語でそれぞれの言葉で丁寧に質問に答えていらっしゃいました。
その中で、今回の逮捕に関して次のように答えていらっしゃいます。
「昨日の逮捕はあまりにも突然なことで、心の準備が出来ていない状態での逮捕でしたので、正直驚きしかありませんでした。
私は香港民主化運動に参加して8年になりますが、これまで4回逮捕されました。
しかし、今回の逮捕が一番怖かった、一番きつかった…」
日本でも、今回のアグネス・チョウさんの逮捕を受けて、香港当局に対して抗議がありました。
Twitterでも、「#庭氏釈放」「#周庭氏の逮捕に抗議する」「#FreeAgnes」などのハッシュタグでたくさんのコメントが寄せられました。
拘束中、弁護士を通じてこれらの抗議文や応援メッセージが寄せられているということを知ったアグネス・チョウさんはとても励まされたといいます。
釈放後、日本に対しても感謝の気持ちを語っておられました。
「特に日本の皆さんからはTwitterハッシュタグで、今回の逮捕についてたくさん抗議文を拡散してくれていたと弁護士からききました。
いろんな愛、いろんな支持をいただきました、本当にありがとうございます。」
と話していました。
アグネスチョウは裁判中?無罪有罪判決どっち?
今回は無事、釈放されたアグネス・チョウさんですが、今後はどのように活動を続けていかれるのでしょうか。
釈放後のインタビューで、「今まで通り活動を続けますか?」という質問に対して次のように答えていらっしゃいます。
「6月30日に声明は出しましたけれども、これからは国際社会とのつながりとか連携とかは出来ないんですけれども、引き続き香港市民の一人として香港の民主化運動、そして香港の民主主義、そして家の為に戦っていきたいと思います。」
今回の逮捕は、アグネス・チョウさんがSNSなどを使って外国に対して批判活動を行ったものだと説明されているとのこと。
ただし、その行為が具体的に法律のどの部分に抵触しているのかということは明らかにされていません。
そんなこともあり、国家安全法が人々の自由な政治活動を弾圧・阻害するものであると、今回のことで改めて世界に示すことになりました。
ちなみに、今回の拘束中にアグネス・チョウさんは、欅坂46の『不協和音』に救われたといいます。
「そしてひとつ最後に言いたいことがあるんですけど、今回の逮捕ほんと怖かったし、そしていままで私が逮捕された4回の中で一番罪が重かった。
でも私は、拘束されているときに『不協和音』という日本の歌の歌詞を、ずっと頭の中で思い出しながら、なんとかその辛さに耐えることが出来ました。」
欅坂46の『不協和音』といえば、同調圧力に屈せず、不服従と抵抗の意志を示すという内容の歌詞で知られています。
「僕は嫌だ!」というセリフも印象的ですね。
ひょっとすると、拘束中に最もアグネス・チョウさんの心に響いたのはこのセリフだったのかもしれません。
いずれにしても、アグネス・チョウさんの民主化への熱意決して消えることはないようです。
アグネスチョウは今後中国に搬送される可能性がある?
国家安全維持法が刑事罰を定めている「外国勢力との共謀」が認定され、有罪判決を受けると、最も重い罪で無期懲役となります。
中国当局は、アグネス・チョウさんのような若い政治活動家を黙らせようとする動きを見せています。
国際的な世論もあるので、アグネス・チョウさんが今回のように突然拘束されたり、中国に搬送されたりする可能性は少ないのではないかと思われます。
もちろん、今後のアグネス・チョウさんの活動によっては今回のような逮捕騒動のようなことが起こるかもしれませんし、その結果、懲役刑が科されるということにもなるかもしれませんが今回の騒動で少し活動を自粛することも考えられます。
アグネスチョウはなぜ民主活動している?
アグネス・チョウさんはご自身のことを振り返って、「政治に無関心なカトリック教徒の家庭で育った」と語っておられます。
ところが、2012年公立学校への「道徳・国民教育」の導入計画に反対する若者を中心とする運動が起こり、当時15歳だったアグネス・チョウさんはこの運動に参加するようになります。
この運動は、香港の教育が中国本土のように厳しい検閲下に置かれることを恐れたもので、この運動への参加をきっかけに、アグネス・チョウさんは香港の民主化運動に専念されるようになりました。
結局、このときの若い人々の大規模な座り込みなどの運動の結果、道徳・国民教育の導入は見送られることとなりました。
若い人々の運動が香港政府を譲歩させたということになります。
2014年には、アグネス・チョウさんは学生を中心とした反政府デモ「雨傘運動」の中心的なメンバーになります。
雨傘運動は、香港での普通選挙実施の約束を中国政府が無かったことにしようとしたことに対して、座り込みやデモなどの抗議行動を起こしたものです。
雨傘運動は79日間にわたって行われましたが、成果としては実ることはありませんでした。
ただ、若い世代を中心に香港の民主化を実現しようという機運は高まることとなりました。
香港は、高度な自治を持つ金融都市として栄えており、中国政府はなんとかこの香港を支配しようと動いています。
そんな中国政府にとって、アグネス・チョウさんら若手の民主化運動家は目の上のたんこぶともいえる存在になりつつあるというわけです。
特に、アグネス・チョウさんは英語、中国語に加えて日本語も堪能で、その力を生かして、香港の民主化運動を世界にアピールすることに成功しました。
Twitterでも日本語で自分の活動について発信を続けており、現在45万8000人のフォロワーがいます。
今後、アグネス・チョウさんが世論を味方につけ、香港の民主化運動をどのように展開していくかに注目が集まっています。
まとめ
- 香港の民主化運動家アグネスチョウが8月10日に逮捕された
- アグネスチョウの逮捕理由は、国家安全維持法違反。分離主義を扇動したとして容疑をかけられた
- アグネスチョウは8月11日の夜には無事釈放されている
- アグネスチョウは拘束中、欅坂46の『不協和音』の歌詞を思い出して自分を奮い立たせていたという
- 2012年公立学校への「道徳・国民教育」の導入計画に反対する運動に参加したことをきっかけに民主化運動家となったアグネス・チョウ
- 流暢な語学を武器に、世界に香港の民主化をアピールしています